脉で病体を診察し、痛くも熱くもない
「経絡鍼灸」の効果は、化学で証明されています。

はりとお灸で、身体の電気の流れを整えます。

 空気が乾く冬場に、電位差の大きい衣服を重ね着すると、静電気がおきます。自動車のドアノブに触れると帯電していた電気が流れ、スパークします。天然素材のビルの外壁や樹木に触れてもスパークすることはありません。しかし、電気は流れています。樹木に手を触れたあと、ドアノブに触れても、スパークすることはありません。このことから、私たちの身体の中には微小電流が流れており、身体は電気的に変化していることがわかります。

 私たちの身体の組織や器官は電気によって動かされ、生命活動を行っています。金属のドアノブや樹木と人の身体やの間には、電位の差があります。はり灸は、この電位の差を使って身体の電気の流れや信号を変えることができます。

 電気系統にトラブルがあると、自律神経が乱れ、病気になります。はり灸は、ツボを使って治療しますが、ツボは家庭の電気回線の中の分電盤にあたります。ツボは気の門戸と言われ、「電気・病気・元気」の出入りするところとなっています。

 ツボは、その時の「放電・漏電・停電」の状態を現しており、これから行うべき治療法を指示してくれています。その指示に従って、電気をとおす鍼で電気の流れを変え、灸はもぐさの温熱で電解液変化させ、電気の流れを変えます。

 ツボは、「効くところ」でも無く、「治すところ」でも無く、治療家の技術によって「効かせるところ」であると言われ、素人の方がツボに鍼をしても効果はほとんどありません。

 この技術を学ぶために、私も所属している鍼灸の学術団体「東洋はり医学会」の会員は、学術の向上・技術修練を毎月たゆまず行っています。

西洋医学から見た、はり灸治療の効果

 電気の流れが正常になれば、全身の組織器官が正常に機能し、自然治癒力が高まります。

 東洋医学的には、五臓六腑、全経絡の気血のめぐりが良くなることを「元気」といいます。「元気」になれば、自然治癒力が高まり、病気は自然に治っていきます。このしくみを、化学の力を借りて見ていきたいと思います。

 近年、はり灸を行う医師が多くなってきています。自分で行った医療を化学検査できる医師が、はり灸治療が効くしくみについて調べました。

深鍼強刺激の鍼で治療した場合

交感神経を刺激し治療直後は症状の改善がみられるが、その後リバウンドをおこし、白血球は減少、免疫力が低下してしまいました。

一方、

証(あかし)に従った浅鍼低刺激の鍼

副交感神経を刺激して、身体を守り病気を治す力を高めるリンパ球の中の1型「ヘルパーT細胞」が劇的に上がり、リンパ球の値は最高の40.0%に。その後リバウンドも起こさず、免疫力が上がりました。

 はり灸と食事療法だけでガン専門の治療を行っている医師は、リンパ球の中のサイトカインホルモンのインターロイキン-12、インターフェロン-γなどが増加し、西洋医学では余命3ヶ月と言われたガンが治ったケースもあります。

 うつ病などの精神神経疾患を取り扱っている医師によって、脳の働きを円滑にするセロトニン、ノルアドレナリンや、脳神経の栄養剤とも言われるEDNFが、はり灸治療によって増加することが確認されています。

遺伝子研究から見たはり灸治療

 低刺激のはり灸を施すことで、病気を治す薬用物質の生産が高まり、これが自然治癒力を高め、病気を治している。このことを遺伝子研究の視点から見てみたいと思います。

 近年遺伝子の研究が進み、病気になるしくみも、治るしくみも解析されており、すべては遺伝子に書き込まれていると言われます。ノーベル賞候補にもなった筑波大の村上先生は、「笑い」によってこれまで眠っていた64個の遺伝子が、目覚めたことを化学的に証明されました。

 西洋医学では治すことの出来ない病気に、筋ジストロフィーがありますが、この病気にかかり、寝たまま死を待つよりもと、笑い療法にかけ、この療法で病気を治し医師に復帰された先生がいます。これは、笑いという低刺激がこれまで眠っていた病気を治す遺伝子の回路のスイッチをオンにし、遺伝子を目覚めさせたことで、身体で薬がつくられ治ったものと考えます。先の医師の報告も、はり灸によってこれと同じことがおきているものと思います。

 経絡治療は、東洋医学の診断法によって病気の本態をとらえツボを選択し、これにはり灸を施すことで、これまで眠っていた病気を治す遺伝子の電気回路のスイッチをオンにし、病気を治していると考えます。

四診法による診断と、その所見に応じた手技

 脉診流経絡治療では、トラブルの起きている電気回路(経絡)を「望、聞、問、切」の四診法によって的確にとらえ、脉の速さや、強さ、緊張とを脉診によってとらえ、いま交感神経優位の電流が流れているのか、副交感神経優位の電流が流れているのかを診断します。ツボに現れている触覚所見から、どのようなトラブルが起きているかを読み取り、現れているツボ所見に応じた手技・手法を行い、病気を治す力が高まる、副交感神経優位の電圧に調整します。これによって、眠っていた遺伝子を目覚めさせ、身体の中で病気を治す薬用物質がつくられることによって、病気を治しているものと考えられます。

はりと灸の効果のしくみ

 3000年の伝統と経験の積み重ねによって生まれた診断法で病気の本態を捉えることができるため、的確に病気を治す遺伝子に働きかけられる。これが、笑い療法やその他の治療法よりも、治療成績が高い要因と考えられます。浅鍼、あるいはほんわか暖かい低刺激のはり灸が、副交感神経を刺激し、病気を治す遺伝子を目覚めさせているのです。

 電気を通すはりは直接的に電気の流れを変え、灸はその温熱で電解液を変化させ電気の流れを変えます。つまり、鍼は直接的、灸は間接的に電気を変化させる、という違いはあっても、その働きは同じものなのです。電気の流れを変える、という意味では、はり灸どちらも同じ作用がありますが、はりまたは灸の特徴を利用し、症状に合わせ使い分けることで、治療成績をさらに上げることができるものと考えます。

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